老年期 どこまでもご一緒に

人間の永久歯は親知らずまで入れると全部で32本あります。一本ぐらい無くなってもまだたくさんあるからと思っていると、知らない間に多くの歯を失ってしまう結果になってしまいます。歯が無くなると言う事は、私たちの日常生活に大きな影響を与えることを知っておいて頂きたいと思います。

例えば、第一大臼歯(6歳臼歯)が一本無いだけで、咀嚼(噛む)の効率は40%も低下するとされています。

これは、今まで30回噛んでいた人が、50回噛まなければならなくなるということです。噛む回数をそうそう上手く自然に変えることは出来ません。そこで、噛み潰さないまま飲み込むか(もちろんこれは胃腸に負担を掛け、体に良くない事は言うまでもありません。)、柔らかい物だけを口にするようになります。これは何とも味気ない、寂しいことですね。

入れ歯の歴史は古く、紀元前の遺跡から発掘されることがあり、日本でも古くは平安時代には使われていたとされています。当時の入れ歯は木で作られていたそうです。歯が無くなっても義歯を入れればいいと考える人が多いのですが、義歯を入れても、元の自分の歯とすっかり同じになるわけではありません。例えば、総義歯ではどんなに良い条件の顎に、よく出来た義歯を用いても、自前の歯で噛む時の25%~50%程度しか噛めないと言われています。やはり自分の歯に勝るものはありません。しかし、何らかの事情で自分の歯を失ってしまった場合、治療法としては ブリッジ、義歯(入れ歯)、インプラントという方法があります。いずれも長所短所があり、どの方法が自分の口内の状況に適しているのか、歯科医と良く相談の上、行ってください。

ブリッジ
入れ歯
インプラント

また、どうしても避けては通れない問題として、歯茎の後退があります。歯を保つことも大事なのですが、一つ気をつけないといけないのが根の虫歯です。エナメル質の部分よりも根の部分は比較的柔らかく虫歯になりやすいのです。歯の上の部分が大丈夫だからといって安心すると大変です。歯茎が後退してしまうと根が露出し、この部分が虫歯になる確率が高くなります。毎日のケアを怠りなく。

前にも取り上げましたが、咀嚼・噛むということは多くの効用があります。まず、胃腸の負担を軽くし、消化を良くします。食品中の味覚を刺激する物質を抽出し、食事を味わう楽しみを増加させます。また、歯を丈夫にし、口の中をきれいにします。食品中の有害物質を無毒化させます。良く噛みながら食事をすると、満腹感が得られ、過食を防ぎ、肥満を防止します。脳の血行を良くし、知能の発達を促し、成長期の子供の顎の骨の発達を良くします。
このため、日本では80歳まで歯を20本残すという8020運動が1989年に提唱されました。これは、日本国民の平均寿命である80歳まで、少なくとも20本の歯を残せば、ある程度の咀嚼機能は維持できるとして提唱されました。尚、この折の調査では、歯を喪失した原因の9割は虫歯と歯周病だったそうです。
自分の歯を残してこその咀嚼(噛む)です。子供の頃からの正しいデンタルケアで、ぜひご自身の歯と一生添い遂げて頂きたいものです。