歯が無くなると痴呆になる?!

平成14年に歯の数と脳の萎縮に関しての研究が、財団法人・ぼけ予防協会と厚生労働省の助成を受けて設置された調査研究検討委員会(委員長、石川達也・前東京歯科大学長)のプロジェクトとして実施されました。

実際に歯の数が減ると脳が萎縮するということを突き止めたのは東北大学の渡辺誠教授らのグループで、仙台市内の70歳以上の高齢者1167人を対象に、健康な人と痴呆の疑いのある人の歯の数を調査したのです。その結果、健康な652人は平均14.9本の歯がありましたが、痴呆の疑いのある55人は9.4本と少なく、歯の数と痴呆との関連が示唆されました。さらに、高齢者195人(69~75歳)の脳をMRI(磁気共鳴画像化装置)で撮影し、残っている歯や噛み合せの数と、脳組織の容積との関係を調べた結果、歯が少ない人ほど海馬付近(大脳辺緑系の一部で短期記憶の器官)の容積が減少していることが判明しました。そして意思や思考など高次の脳機能に関連する前頭葉などの容積も減っていました。また、噛み合せの数が少ないとこうした部分の減少が大きいことも分かりました。渡辺教授は、「噛むことで脳は刺激されるが、歯がなくなり、歯に関した痛みなどの神経が失われると脳が刺激されなくなる。それが脳の働きに影響を与えるのではないか」と話しています。

このほかにも、東京医科歯科大学ではものを噛むと脳の血流が増えるが、逆に噛まないと減少するという研究が発表されるなど、噛むことと脳との間には大きな関係があることが多くの研究で示唆されています。

日本は世界有数の長寿大国ですが、その一方で世界有数の「寝たきり大国」でもあります。寝たきり患者数は2010年には170万人、2025年には230万人に達すると予想され、これはなんとアメリカの約10倍の数ということです。(人口比)

日本人の寝たきり患者が多い最大の原因は現行の医療制度・介護者不足の為だと疑われますが、日本人の高齢者の歯の状態がアメリカなどの歯科先進国と比べて悪いというのも、寝たきり患者が多い理由の一つではないかと考えられています。実際、歯科先進国のアメリカ、スウェーデンなどは寝たきり患者の数が非常に少ないのです。

アメリカでは保険制度の影響で虫歯を作ってしまうと高額な治療費がかかるということを皆知っているので、虫歯にならないように子供の頃から予防をしっかりと行う習慣があります。

アメリカの保険では、虫歯にならない為の、予防についてのカバー率が高いのが特徴であり、6ヶ月に一回のチェックアップは欠かさないという人が多く、
虫歯になってしまうということ自体が日本と比べてはるかに少ないのです。それに対して日本は、「虫歯になったら治療すれば良い」という考え方がまだ主流で、痛みが出るか、何か問題が出ないと歯医者に行かないという事が当たり前になっています。これでは日本は歯科後進国と呼ばれてもおかしくありません。

日本は国民健康保険制度なので、虫歯になっても比較的安い(世界的には圧倒的に安い)治療費で治療を受けることができるのですが、そのため、国民の予防に対する認識が薄れてしまい(予防が保険適用とならないことも理由の1つです)、気付いた時には口の中が悲惨な状態になっている、手遅れになってしまうということが多いことを、もっと皆が知らないといけないと思います。

せめてアメリカに居る間だけでも、お持ちの保険を最大限利用して、チェックアップ(定期健診)だけでも欠かさないようにする事をお勧めします。

虫歯や歯周病は、一部遺伝的なものもありますが、基本的には生活習慣病です。
つまり、しっかりとした予防を行えば確実に予防ができる病気なのです。
歯を大事にしてボケ、寝たきりを防ぎましょう!

資料提供:

日本歯科医師会(日歯広報2月25日号)