一子生むと一歯失う!? 妊娠中のママと胎児の歯の話

昔からよく、「一子生むと一歯失う」ということが言われてきました。妊娠中や産後の育児期間を通じて、母親の口内の健康が損なわれることは非常に一般的です。でもこれは決して赤ちゃんの歯にカルシウムを取られるからではありません。妊娠中は唾液の性質が酸性になり、歯垢がたまりやすくなります。そして、体温が高くなるため、口の中の細菌が繁殖しやすくなり、病気の進行が早くなります。

つわりがひどくてあまり食べることが出来ない、または歯磨きをすると吐き気がする。食事の回数が増えても億劫で歯磨きの回数はあまり増えない。産後は慌しくてとても自分のことには構っていられないので、気がつくと歯を磨き忘れてそのまま赤ちゃんとぐっすり・・・何てことに心当たりがあるのではないでしょうか。また、妊娠中は女性ホルモンの影響で歯肉が腫れ、出血しやすくなる方や歯がグラグラする方、口内炎が出来たり、口の端が爛れたりする方もいます。おっくうでもきちんと歯を磨き、十分な栄養と休息をとっていれば、虫歯や歯周病は予防することが出来ます。赤ちゃんのためにも自分のためにも、栄養管理に気を配り、全身の抵抗力を高めて口内の健康を保ちましょう。

私達の歯は通常生後6ヶ月頃から乳歯、5~6才頃から永久歯が生え始めます。
これは突然生えて来るわけではなく、妊娠6~8週、なんとまだ妊娠していることが判明していない時期に、胎児の歯肉の中で歯の芽(歯胚)が成長を始めるのです。

また、永久歯の歯胚は妊娠5ヶ月頃に出来始め、着々と成長を始めます。この成長は妊娠期間を通してずっと続けられ、赤ちゃんが誕生する頃、乳歯はほぼ完成に近い状態で歯肉の中で出番を待っています。ということは、歯の丈夫な子にする為には、妊娠中のママの健康状態や栄養管理がとても大切だということです。ママが偏食やダイエットなどで栄養バランスが崩れると、赤ちゃんの歯や体の成長にも影響します。これは責任重大ですね。
妊娠中の栄養の中でも特に歯の形成と関係が深いのは、歯胚を作るたんぱく質、エナメル質や象牙質を作るビタミンAやC、石灰化させるカルシウムやリン、それらの働きを助けるビタミンE 等です。特にカルシウムはただでさえも不足しがちな栄養素です。妊娠初期はつわりが辛く、食欲もわかないかもしれませんが、味付けや調理法を工夫して、食べられる時に効率よく、出来る限りまんべんなくとるように心がけましょう。

気をつけていても歯の痛みや歯茎の腫れ、出血は起こります。そのような症状が出たらすぐに歯科を受診しましょう。放っておいて悪化したらそれこそ治療が難しくなります。妊娠以前から定期的に口内のチェックを受けて入れば、色々な異変にもすぐに対処してくれるでしょう。妊娠中であることを伝えればそれに応じて先生が適切な配慮をしてくれます(投薬、麻酔、X線など)。
その上で、もし虫歯や抜歯等の治療が必要であれば、母体の精神的な影響を配慮して、つわりが落ち着いて安定期に入ってからの治療をお勧めします。また、何もなくても安定期に入ったら歯医者を訪れ、口内のチェックとともに、歯石を取り除いてもらいましょう。そして虫歯や歯周病の兆候が見つかったらトラブルが大きくならないうちに治療を済ませてしまいましょう。おなかが大きくなったら仰向けの姿勢はつらいもの。また、産後に激しい痛みとともに歯医者に駆け込む人も決して少なくは無いからです。

虫歯菌は9割が母親から赤ちゃんに感染するといわれています。大変な思いをして生んだわが子に自分の菌を移してしまわぬよう、出産前に虫歯を無くして、子供を感染から守りましょう。これも一つの親の義務でしょうか!?